あまお's blog 別館

司法試験受験生の戯言の別館です。本館はこちら→http://blog.livedoor.jp/amao019/

国際私法ガール 第1話 〜平成18年新司法試験国際関係法(私法系) その1〜

※国際私法ガールはラノベ形式で司法試験の国際私法の過去問を解説していくものです。なお、この物語はフィクションです。

 

1.出会い

僕は今、大学四年生の男子だ。某山の上大学*1の法学部に通っている。いまのところ、授業開始までなんとあと1分しかないが、最寄りの駅から法学部棟まで10分の道のりの半分までしかきていない。一応急いでいるつもりだから、手には授業で使う教科書を持ってはいる。

あー授業めんどくさい…法哲学の本*2でも借りに図書館行こうかな…

「ねぇ」

毎日、毎日何を好き好んで登山しなきゃならんのだ。

「ねぇってば」

そもそも、教室があるのが駅から10分歩いたところなのがおかしい。

「ちょっと、君聞いてる?」

「え、僕ですか?」 

いきなり現実に引き戻された。そこには、肩口くらいの髪の長さの女性がA4サイズの紙を握りしめて立っていた。その女性は、猫のようにつぶらな瞳が特徴的な可憐な少女と大人びた美人の横顔が混ざりあった個性に満ちた顔立ちをしていた。

「この問題が分からないんだけど、君分かる?その手に持っているのは松岡*3でしょ?」

 いきなり、その女性から手渡されたA4サイズの紙には、国際関係法(私法系)と書かれていた…

http://www.moj.go.jp/content/000006523.pdf:平成18時新司法試験選択科目問題文

2.第一問

「じゃあ、そこのベンチに座ってやりましょうか。」と僕はそばのベンチを指差した。

 何か良く分からないが、この女性は司法試験の過去問を解きたいらしい。授業ももう間に合わないし*4、いっちょ解くか。美人だし。

「お、ありがとー!じゃあ、まず設問1ね。」

(1)設問1

 A州の裁判所の判決の効力が日本において問題となる場合に,その効力が日本で承認される ための要件である管轄権はA州に認められるか。

判決の効力?管轄権?なんじゃこりゃ。

「これは...何ですかね?」

「君、それでも国際私法の勉強してるの?外国の裁判所の判決がすぐに日本で認められちゃって、それが変な内容の判決だったら、敗訴した人の裁判を受ける権利(憲法32条)の保障が十分じゃなくなっちゃうでしょ?だから、民事訴訟法では、一定の条件を満たさないと外国の判決の効果を日本国内では認めないってことにしてるんだよ*5。」 

なるほど、これが学部の初回の授業で少し触れていた外国判決の承認か。確か、民訴法113条だっけか。

「違うわ、民訴法118条ね。」なんだこいつエスパーか。

「あれ、訴訟手続きに適用すべき法律は、そもそも日本法でいいんですか?」

「そうね。『手続は法廷地法による』の原則*6って知ってる?」

「なるほど。じゃあ今回は日本で承認が問題となっているので、日本法である民訴法が適用されるわけですね*7。」

「じゃあ、本件では条文のどの要件が問題では聞かれているわけ?」

「1号ですかね。」「そうね。」

民訴法118条1号

法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。

「これは、間接管轄と呼ばれていて、日本の裁判所において、外国の事件の管轄が認められるかという直接管轄と同じ判断基準かどうかという議論があるね。」

直接管轄は、民訴法3条の2以下で定められているんだっけか。

「間接管轄の判断基準は?直接管轄と同じなの?」

判例は同じって言ってなかったっけ*8...

「違うっていうのが判例の考え方っていうのが近時は有力よ*9。」

人事に関する訴え以外の訴えにおける間接管轄の有無については,基本的に我が国の民訴法の定める国際裁判管轄に関する規定に準拠しつつ,個々の事案における具体的事情に即して,外国裁判所の判決を我が国が承認するのが適当か否かという観点から,条理に照らして判断すべきものと解するのが相当である。( 最判平成26年4月24日)

こんな新しい判例知らなかった。

「じゃあ、本件だとどうなる?」

「あれ、本問だとZのYに対する扶養料の支払請求ですよね。この判例は使えるんですかね?」「そうだね。どう考えようか。」

この判例は人事に関する訴えを除いているから、この判例では判断できないよな。こういうときは、どんな法律も定石の原理・原則から考えるか。

「明文がない場合には、条理から考えますよね。」

当事者間の公平の観点から、相手方の応訴の負担がある扶養義務者(被告)の住所地には管轄は認められそうだな。扶養を受けられないことは、扶養権利者にとって不利益が大きすぎるから、扶養権利者(原告)の住所地にも管轄を認めるべきだよな*10

 「扶養権利者のZは米国に住んでるから、Zの住所地である米国に管轄が認められると思います。」

「そうだね。じゃあ設問2にいこうか。」

(2)設問2

 Xは,その後,離婚とXのための離婚後の扶養料の支払をYに求めてA州の裁判所に訴えを提起した。A州の裁判所は,A州の法律を適用し,XとYの離婚を認め,同じくA州の法律により,Xのために離婚後の扶養料として月額2000合衆国ドルを支払うようYに命ずる判決を下した。Yは,この判決に従い,1年間,日本から同金額を送金したが,自己の経済状況が悪化したため,日本の裁判所に扶養料を月額1000合衆国ドルに減額する申立てをした。A州の前記判決が日本における承認の要件を満たしていると仮定した場合,この扶養料減額請求に日本の裁判所が適用すべき準拠法は何か。

準拠法選択は分かるぞ。外国人や外国における法律関係については、そもそもどこの国の法律(実質法)を適用するかっていう問題だな*11

「準拠法を決定するのは、基本的には法の適用に関する通則法(以下、通則法)で決めるので、今回は...何条ですかね?」

「準拠法の決定プロセスは分かるかな?」

 これは、学部の授業でやったぞ。①法性決定→②連結点の確定→③準拠法の特定→④準拠法の適用だな。

「まずは、今回の単位法律関係の性質を決定しないといけませんね(①法性決定)。本件では、扶養料の減額請求権が問題になっているから、『扶養の義務』(通則法43条1項本文)の問題と性質決定できて、通則法は適用されないみたいです。」

「そうだね。扶養については特別法があるって、君の持っている松岡には書いてあるな。」「何勝手に読んでるんですか。」

いつの間にか、手に持っていた教科書を奪われていたみたいだが、示されたページを読んでみる。なるほど。扶養義務の準拠法に関する法律(以下、法)というそのものズバリの法律があるのか。

「法1条の『扶養の義務』と性質決定ができるので、法2条で連結点を確定します。」

「本当に?条文はちゃんと読んだ?」

あ、法4条1項に離婚の際の特則があった。

「法4条1項から、離婚について適用された法が準拠法になります。」

「国際私法で大切なのは条文の趣旨だ。なぜ、その連結点が採用されているのかということは必ず答案上示さないといけないよ。法4条1項の趣旨は?」

「離婚に適用した法律と同じ法律を適用することで、扶養義務について統一的な解決を図ることを可能にする点にあるかなと。そうすると、実際に離婚の際に適用した法律を準拠法にするものと考えられます。」

「そうだね。知らない条文の趣旨を考えるときは、その連結点を採用することで、どんな利益を確保しようとしているのかを考えれば大きく外すことはないと思うよ。」

本件では、離婚に実際に適用した法律である、A州法で扶養料減額請求権は判断されることになるだろうな。

「いい感じだね。じゃあ、設問3だ。」

(3)設問3

A州の裁判所の離婚判決の効力が日本において承認されないことが判明したため,Xは日本の裁判所に離婚の申立てをした。この場合に,Zの親権者の指定について日本の裁判所が適用すべき準拠法は何か。

「これも準拠法選択だから、狭義の国際私法の問題ですね。単位法律関係は、親権者の指定だから、『親子間の法律関係』(通則法32条)なので簡単ですね。」

「そうかな?本問は何かに付随して親権者を指定することにしていない?」

「離婚と同時に親権者の指定をしようとしていますね。そうすると、『離婚』(通則法27条)ですか。」

「これが、狭義の国際私法での論点だね。離婚の際の親権者の指定はどのように法性決定されるかな?まあ、簡単に言ってしまえば、どっちの条文が適用されるかな?」

えーと。わからん。

「しょうがないなあ。こういうときも原理・原則から思考しようよ。国際私法で単位法律関係を解釈するときは、どんな観点からするかな?」

「各国の実質法は異なるから、国際私法独自の立場からしますね。」

「うん。じゃあ、条文上不明確な時にどの観点から解釈するかな?」

「みんな大好き、条理ですね。」 

「そうそう*12。今回の条理は何を起点に考えようか?」

「通則法27条と32条の適用範囲の問題なので、条文の趣旨から考えます!」 

条文の趣旨は、連結点がなぜそうなっているかで考えるんだったな。通則法27条は両性の本質的平等の観点から、夫婦に同一の準拠法があるように連結点を設定しているみたいだ。他方、通則法32条は子の福祉の観点から、子と親の本国法が同一であることかそうでなければ、子の常居所地法を準拠法にしているのかな。

「より、親権者の指定にふさわしい条文は?」

「いくら離婚に付随していると言っても、子にとって誰が親権者になるかは、子の利益に密接にかかわるので、通則法32条が適用されると思います。」

「そうだね。じゃあ、通則法32条を適用しようか。『子の本国法』は?」

「あれ、今回Zは日本と米国の二重国籍ですね。この場合の本国法は通則法38条1項で決定されるんですかね。」

「今回はZは日本の国籍を持っているから、同条但書の問題だね。これは、常に日本法を本国法とすることで、戸籍実務の便宜を図る点に趣旨があるよ。」

なるほど、これは連結点を見てもわかりにくいから、趣旨は覚えておかないとな。

「子の本国法は日本法で、『父』であるYの『本国法』もYが日本人だから、日本法で判断されることになりますね。」

「よし!第一問おわり!次行こっか!」

「まだやるんですか…」

なんなんだこの人。わからないとか言ってたけど、国際私法の知識がかなりあるみたいだ。どうしてわざわざ司法試験の問題を解かせようとしてくるんだ?

 

 

第二話へ続く。

 

 

*1:決して、実在する大学ではありません。

*2:H.L.Aハートの『法の概念』は古典的名著。ぜひ一読を。

*3:松岡博編『国際関係私法入門ー国際私法・国際民事手続法・国際取引法』(有斐閣、第3版、2012年)のこと。国際私法のスタンダードな入門書であろう。もう松岡先生は亡くなっているので、改訂が望めないのでしょうかね。

*4:よい子は真似しないでね!

*5:正確な理解は、中西康『国際私法』(有斐閣)174頁以下参照。以下リークエ。

*6:リークエ14頁。手続には、常に法廷地(裁判の行われる地)である法律が適用されるという原則のこと。

*7:答案上も触れなくてはならない。平成28年採点実感参照。

*8:最判平成10年4月28日百選108

*9:長田真理「外国判決の承認・執行」法教424号41頁

*10:リークエ382頁

*11:これを狭義の国際私法と言う。

*12:国際私法独自説と解釈指針の条理は、答案上示すことが要求されている。平成28年採点実感参照。

国際私法ガールはじめます。(と目次)

1.法学ガールシリーズとは?

babel先生やronnor先生がはじめた、ブログ上で司法試験の問題をラノベ形式で解説していくというものです。

憲法ガール』と『行政法ガール』の二つは書籍化されています。

詳細は、ronnor先生のブログの記事法学ガール(◯法ガール)まとめ - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常を読んでもらうのが早いです。

 

2.国際私法ガール

司法試験を受けた身として、国際私法の司法試験の過去問の解説があればよかったなととても感じたので、ないなら作ればいいと考えました。

そこで、私自身、物語を書いたことがないのに「法学ガールシリーズ」をやってみようと思い立ちこうした記事を書きはじめた次第です。

私は、国際私法の授業を受けたこともなく、ほぼ独習の身ですので、あくまで勉強する際のたたき台として使っていただけるようなものを作ることができるように頑張りたいと思います。

更新は不定期になると思いますし、完結するかも不透明です。温かい目で見守っていただけると嬉しいです。

 何か、間違っていることがあったらコメント等で知らせていただけると嬉しいです。

 

3.目次

 平成18年→第一問 第二問(近日公開予定)

To be continued...

 

別館ブログはじめました

どうも、こんにちは。

あまおです。

はてなブログさんでもブログを開設しました。

こちらのブログは、書評ではなく、長めの記事を書くためのブログにしたいと思っています。

本館はこちらですので、よろしければそちらも読んでみてください。→http://blog.livedoor.jp/amao019/:あまお's blog

ゆるりと更新していくのでよろしくお願いします。